花手紙10通目「くまさん1」06/10/04
2006/10/04
花手紙のバックナンバー
新作です。亀配信のみですが。
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くまさん
「あー!」
もう寝ようとして横になって思わず声をあげた。いつも寝る前にベッドの脇で充電するのに携帯をリビングに忘れてきたのだ。あたしのあげた声に今まさにロフトに続く梯子を半分登っていた彼「くまさん」が足と手を止めた。
「またぁ?」
彼の目がやれやれと物語る。あたしはロフトから顔を出し、えへへと笑う。
「お願い、取ってきて」
あたしがこう言っても彼は絶対に嫌がったりしない。
彼はしょうがないねぇと呟きふっとい手とふっとい足をそろそろと動かし降り始めた。
くまさんと会ったのは随分昔。あたしの一番の友達でずっと一緒に居た。
「じゃあ行ってくるよ」
背伸びをしてドアノブを回すと彼はそっと出ていった。まあるくてキュートな薄茶色の尻尾を見せながら。
実はくまさん。
ある日突然動き始めた、くまのぬいぐるみなのだ。
つづく