「……気付いておられましたか」 「驚かないね?」 「ここを紹介された時に、『普通ではないから安心しろ』と言われまして、期待して来たのですよ」 (ま〜た近所の悪がきだな……今度、懲らしめる必要があるわね……♪) 瑠闇は知らずのうちにくっくっくと笑っていた。 「あのお」 老人に話し掛けられると我に返り、思考が仕事モードに変わった。 「すみません。では、ご用件は?」 老人は全てを見透かしているような瑠闇の瞳をしばらく見つめ、溜息を吐いた。 「貴方も人が悪い。解っていらっしゃるでしょうに」 「こちらの勝手な解釈は時に依頼者の逆鱗に触れますので、なるべく依頼者の方に言ってもらってます」 瑠闇の営業スマイルは、男性キラーである。笑顔と内心は相反している。しかし、老人はまた一つ溜息を吐き、一拍間を置くと一言の依頼を言った。 「私を一族の元へ送り届けて欲しい」 |