「何テメェが仕切ってるんだ」 向かいの席から声がした。 アズは振り向きつつそんも声の主を睨みつける。 声の主は男子で燃えるような赤い短髪。カチューシャで前髪を上げていた。瞳も赤く燃えていた。 「はぁ…?アシュに頼まれたからに決まってるだろバーカ」 「何だと…」 「テメェはさっきのアシュの話を聞いていなかったのか?アシュは俺に頼んだんだ」 「…俺は確かにこの班に在籍しているがアシュレイにもアズにも従う気はねぇ…!」 「相変わらず単細胞の獣だなルキヤ。いつまでたっても俺やアシュに勝てないからって従わない…馬鹿以外の何者でもないな」 アズのその一言でルキヤと呼ばれた少年は怒りをあらわにした。 「ふざけるな……!!俺はいつか必ずテメェらを倒してみせる!そして必ずリオラの帝王になる…「爆風」にも「水萍」にも負けねぇ!!」 そう言ってルキヤは手に炎を出現させた。 「ガキだな。リオラの伝説なんか伝説でしかないのにお前は真の馬鹿だな…「火炎」」 ため息をついてアズは口で何かを呟いて風を巻き起こした。 クラスにざわめきが走る。 「あー…また始まったぞ…誰か先生呼んでこいよ」 「アズの奴…アシュレイの言っていた事忘れてるよね…」 この現象はこのクラスでは日常茶飯事だった。その中で班の中で静かに作業をしていた男子が顔を上げる。茶色の長い髪を緩くみつあみにして肩にかけてある。眼鏡の向こう側から優しそうな焦げ茶の瞳がのぞいていた。 「二人とも、静かにしてください。授業中の術使用は禁止になってますよ」 彼の声を聞いて二人は固まった。 「ウォルちゃん…」 「ウォル…」 「そろそろアシュさんが戻って来ます。続きをしたいならどうぞ?ただし、肉弾戦にしてください」 にこっと微笑むとウォルは席につき普通に作業をしていた。 残された二人はただ固まるだけ…かと思われたが… 「じゃあ肉弾戦だ…!!」 ルキヤが拳をアズに向かって放つ。アズは冷静な顔をして後ろに下がった。 「何…逃げるのか?」 「いいや?別に…」 ルキヤの攻撃をアズは華麗にかわしていく。その間ウォルと数名をのぞくクラスメイトは廊下に避難していた。 残っていたクラスメイトの一人がウォルに近づく。 「ねぇ…ウォルちゃん…先生に言った方がいいわよね…?」 少女は中学生には見えないほど整った顔立ちだった。金の髪が背中までウェーブして伸びている。 「そうですね。お願いします」 ウォルの言葉を聞いて少女は微笑んだ。女神のような微笑だった。 「私が行くわ」 入り口付近に立っていた少女が素早く走っていく。 「おい、ヴィーナス…ラキが伝えに行ったしそろそろ避難したほうが…」 ヴィーナスと呼ばれた少女の後ろで男子がうろたえている。 「いいのよノース君。ラキちゃんが行ったのならすぐアシュちゃんが来てくれるわ。ほら…」 ヴィーナスが後ろを指した。そこには先程走っていたラキがもうすでに戻ってきており、その横で阿修羅のような顔のアシュレイが立っていた。 |