身近に小さな文明論・・2004.05.16 カラスのひとり言 ボクはカラスである。ハシブトカラスといって、先祖は熱帯のジャングルか らやってきたという。でも、ボクはこの町で生まれた。町といっても外れの 方にある、市民の森に繁る大木がボクの生まれ故郷なのだ。森には400を 越える仲間がいくつかのグループに分かれて生活している。今日は少し趣向 を変えて、ボクの方から人間の社会を紹介しようと思う。 朝5時少し前。既に日の出を過ぎて、緑を透かした空が赤い。ボクたちはい つもの仲間と一斉に大空に飛び上がった。町の中心に向かういつものコース を元気一杯に羽ばたいていくと森が切れ、畑を越えて、直ぐに住宅地に変わ る。それにしても人間たちはどこまで住宅地を伸ばすのだろう。ふとボクた ちの森は大丈夫なのだろうなと不安に苛まれる。 でも人間が増えたお陰でボクたちの生活も楽になったのだから、文句は言え ない。おじいさんの時代には朝から晩まで食べるものを探してただウロウロ、 ウロウロ。それでも見つからないときには空腹を抱えて森に戻ったと聞いて いる。それに比べてボクらの世代は食うものに困った覚えなど一度もない。 人間様の出す生ゴミのお陰で朝から満腹。何しろ毎日東京だけでトラック百 数十台分のご馳走を捨てているんだから、ボクたちにとっては人間様様に違 いはない。その上、たっぷりの自由時間が残されるのだから・・ そろそろボクたちの食事場に到着。住宅地の生ごみ収集所脇の電柱にふわり と降り立った。何故ここを選んだかというと、近くのレストランから出るご 馳走が目当てなのだ。人間って奇妙な生き物で、アフリカの飢えた人々を救 おうなどとシュプレヒコールを挙げる一方で、ボクたちが成人病(成カラス 病かな)になりかねないほどのご馳走を惜しげもなく捨てている。もっとも それでボクたちの数もどんどん増えたのだから文句など言えないけど・・ でも、ボクたちの数が増えると人間の方でも危機感を感じるのかな。最近ご 馳走を大きな網で覆ったりして、ボクたちの食事を邪魔したりする。そんな 網などボクたちに対して何の役立たないことも知らずに。電柱の上から人間 の行動を眺めていれば、どう対処すれば良いかなんて一目瞭然。人間は地球 上で一番の知的動物だと思っているようだが、ボクたちと比べてみるといい。 今回は時間になってしまったからこれで終るけれども、近いうちに内緒でそ のことをはっきりと教えてあげようと思う。きっとびっくりすると思うよ。 (いつの日にかに続く) |