(……) その、少しざらつく殻を見ていると、余計にこの卵が非現実的なものに見えてくる。 滑らかな曲線に囲まれた形はいかにも優雅で、まるで精巧に作られたオブジェのようだ。 最初は本当にそう考えた。作り物で、生きてはいないのだと。 けれど彼にはどうしても、この卵が生き物であると思えて仕方ないのだ。鳥の卵にしたって、とうに命の保証は無いようなこの卵が。 おかしいな、と小さく自分を笑って、卵を人差し指で小突いてみた。 卵はころんと倒れて、机の端を転がる――― 「あっ…!!」 思わず手を差し伸べた時にはもう遅かった。 |