身近に小さな文明論{No}号  2005/01/23

身近に小さな文明論・・2005.01.23

マングローブの林

メキシコ・ユカタン半島のメリダ市近郊にセレストーン国立公園があ
ります。船底の浅い観光用ボートに乗って繰り出すと、やがてあちら
こちらにフラミンゴの群が現われます。フラミンゴは盛んに餌を啄ば
んでいて水の中に首を突っ込んだのや首をあらぬ方角に向けたのやら
で、一向に一斉に一方向を向いたり羽ばたいたりとの観光客向けカメ
ラポーズなどとってはくれません。いくら待っても同じです。それは
そうですね。フラミンゴにとって人間に媚びたところで一銭の得にも
ならないのですから・・

やがて痺れを切らしたようにボートは岸辺の木々の間に分け入りまし
た。そこは素人目にもわかるマングローブの林でした。目の前で空中
から地中に垂らした太い根が絡み合って、いかにも栄養豊かな様相の
水中には無数の魚が群れています。時折ぬっとサギのような鳥が突っ
立って現れるのも、豊富な魚を求めてのことでしょう。木の上には大
きな土の瘤が作られていて、聞くと蟻塚だそうです。そのように差し
込む光も豊かなマングローブの林は豊かな生き物の楽園だったのです。

ところでマングローブとは海の水と真水とが交じり合うところに生え
る植物の総称のことです。決してマングローブという一種類の植物が
あるわけではありません。一説によると、世界にマングローブの林を
形成する植物は90−100種類もあるそうです。現地の人々にとっ
てそれらは燃料になったり建物の材料になったり、染料、薬から食用
にまで供されるということです。さらに地球環境の面から見ると他の
植物と比較して二酸化炭素の吸収する力が大で、温暖化を緩和するた
めの重要な役割を果たしております。

ところが最近東南アジアのマングローブの林が次々に切り払われてい
るとか。何のためにですって? 一例を挙げますと日本人が食べる海
老の養殖場に変えるためです。そして、そのしっぺ返しの好例として
・・インド洋津波の被害がマングローブのあるなしで雲泥の差となっ
て現われたのでした。マングローブの林は津波から人々を救ったので
した。豊かさを求める代償が災害の弱い環境だったといえるのなら考
えものですね。

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