身近に小さな文明論{No}号  2005/02/06

身近に小さな文明論・・2005.02.06

夢むすびベンチ

街を歩いていたら、手作りのベンチが目に入りました。しかも同じも
のが商店街のあちらこちらにあります。ベンチには「夢むすびベンチ」
と書いてあります。メルフェンチックでもありますが一方で、「夢への
縁結びをする」という昂揚感をも促されます。その証しのように、ベ
ンチには初詣の神社で祈願を託す絵馬のような願い事が吊るされてい
ます。「大きくなったらケーキ屋さんになりたい」・・きっと小学生も
低学年の子が架けたのでしょうね。

夢をしっかりつかめ 夢が潰えると 
人生は翼の折れた鳥のように 飛び立てないのだから
夢をしっかりつかめ 夢が消えると
人生は雪の凍りついた 不毛の荒野になるのだから   
・ ・ラングストン・ヒューズ

誰が発想したのかは知りませんが、素晴らしいとは思いませんか。ふ
とベンチで一休みするたびに自分の夢を確認することも出来るのです
から。人は成長するに連れて智恵を手に入れることよりも知識を身に
つける安易さを学んでしまって(偏差値教育がそう促しているのかも
しれませんが)、いつしか懐いっぱいにあった夢をどこかに置き忘れて
しまうものです。今や知識などキーボードを叩きさえすればたちどこ
ろにほとぼり出てくるもので、真に求められるものは21世紀をどう
繰ったらいいのかという智恵(夢の結晶といっていいのかもしれませ
ん)なのです。夢むすびベンチにそうした希望を感じるとは思いませ
んか?

ところで、「夢むすびベンチ」のことをある人に話しましたら、「ああ、
シャッター通りのあれね」との言葉が返ってきました。最近その商店
街では客足が遠のき閑古鳥が鳴いて、店が次々にシャッターを下ろし
たままに変貌しているのだそうです。モータリゼーションと大型店・
・・顧客はニュータウンを目指してしまうのですね。それを聞いた途
端に、「夢むすびベンチ」に対するイメージがすきま風でそっと揺れる
のでした。


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