身近に小さな文明論{No}号  2005/05/15

身近に小さな文明論・・2005.05.15

鯉のぼり文化の変質

朝ウォーキングをしていますと、家のベランダから突き出た竿の先で泳ぐ
小さな鯉のぼりを目にしました。それも1軒だけでなく、アパートの隣り
合う窓から突き出て南風に乗って泳ぐのを競う姿も見かけました。かつて
は、農家の広い庭で泳ぐほどでもないにしても一戸建ての広くもない庭い
っぱいに泳ぐ鯉のぼりに目を奪われたものでしたが、今年はほとんど見か
けることもなくなりました。代わって現われた小さな鯉はもはや夜になっ
て取り込まれることもなく、1週間、2週間と泳ぎ続けます。確かに手間
もかからないし、お手頃・・ですね。

端午の節句がかつて五節句として公に認められていたことは以前にここで
も述べました。女の子の雛祭りに対する男の子の端午の節句は節目を無事
乗り越えるよう願う、魔除け信仰と結びついた行事でした。特に男の子の
場合立身出世を願う親が五月晴れの清々しい青空に鯉を泳がせながらそう
願ったのでしょう。ところが男女機会均等法などがそうしたかつての男女
の立場をも変質させ、それまで鯉に託そうしてきた親のロマンまでをも奪
い去って、もはや鯉の出番などなくなってしまったのかもしれません。

代わりに鯉は家々の余剰品として市町村で集められ、集団で泳がされて広
場を飾ったり、川を跨いで泳いだりと、鯉祭りの飾りに成り下がりました。
もはやそこに魔除け信仰的要素の入る神聖な余地など存在しません。広場
で開催されるフリーマーケットを買い歩き、食べ歩きをする子供たちの頭
上でただひたすら風のままに泳ぎ続けるだけです。

幼稚園の先生「マコト君、鯉のぼりを上げるのはいつか知っている?」
マコト君「知ってるよ。町のフリーマーケットの日だよ」

子供にとっても、その親にとってもそうしたやり取りが少しも不自然にな
らなくなって、またひとつ日本の文化が変貌していくのでしょう。

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