まさか事実をありのまま話すわけにもいかない。 さんざ考えたあげくに口をついて出たのは、彼女が外で酒に酔った挙句に倒れたという我ながら単純な作り話だった。 『……よくそれで納得したな』 幽霊が呆れて呟いた。 「そりゃもう、必死で説き伏せたからな……今は"二日酔い"で寝てるぜ」 知らないというのは幸せなことだと、青年が肩をすくめる。 「―――とりあえず、怪盗スカーレットの話は欠片も出なかったから安心しな」 「……ごめんね、ジェット」 「いーや、別に」 片手をひらひらさせて、彼は何でもないように言った。 |