北風と太陽/3 2006/01/20
ただ、慣れない道を通っていく不安からか、長い睫毛に覆われた目はどこか覇気がない。
だがそれがまた、儚げな容姿を引き立てるのだ。
彼は一目で、その少年を気に入ってしまった。
「……」
少年の纏う上等な上着を見て、風の青年はふと唇の端を上げる。
彼は、普段こそ仕事を真っ当する良い風だが、ひとたび思いついた悪戯はすぐに実行に移すのが良くない癖だった。
雲を蹴ると、空のもっと高い所へ飛んでいく。
「おーい、太陽!…ハインリヒ!!」
友人の名を呼ぶと、眩しい光をものともせずにその住まいへ降り立った。
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