やがてその、ぎゅっと閉じた目の端に小さな涙の粒が湧く。 風は思わず怯んで、勢いを弱めた。 苛め過ぎたか――― 怖がらせるのが目的ではない。ここまでやったのに、少年から上着を脱がす事は出来なかった。 自分の負けだ。 風は唇を噛むと、再び高い高い空へと舞い上がって行った。 雲の上では、一部始終を見守っていた太陽が腕組みをして待っていた。 「……失敗した」 「当たり前だ。あんなやり方で」 太陽は呆れ果てた様子だ。 「あの人間ごと世界の果てまで吹き飛ばす気か。強引な奴だな」 「何だよ。だったらやってみりゃいいだろ」 |