「ずーっと寝てたもの。結構混んだのよ、車」 お母さんは両手に荷物を持ったままおばあちゃんの家に入ってく。 一年ぶりのおばあちゃんの家。 少し古くて、庭が広くて、青々とした芝生がきらきら光ってる。 「そっか」 誰も居なくなった車内から自分の手荷物だけを持ってふらりと降りる。 もわっと夏の湿気た空気があたしの体を包んだ。 「暑いなー。夏だな」 空を仰いで呟く。 東京よりどこよりここに来ると夏を感じる。 真っ青などこまでも広がる空。 あたしの14歳の夏休み。 「美菜ちゃん」 懐かしい声で空から目を声の方に向ける。 少し腰が曲がった皺だらけの顔。 「おばあちゃん!」 わっと少し離れた場所に立つその人に抱きついた。 なんとも言えない匂いが鼻腔に届く。 おばあちゃんの匂いだ。 「良く来たねぇ」 ぽんぽんと背中を叩いてくれる。 こうやっておばあちゃんの元気な姿が見れるだけで、あたしは凄く満足だった。 |