Il Deserto Rosso/36 2007/02/14
「どうし…」
「たっ、大変です!!……陛下が……父上さまが!!」
「お父様がなに?……落ち着いて、どうしたの?」
その取り乱した様子に、王子の心を一抹の不安が過ぎった。
召使いは扉に取りすがり、やっと息を整えると、王子のざわつく心に嵐をもたらす言葉を呟いた。
「……あの歌い手を……っ」
***
「―――……何か、申し開きはあるか」
王の声音は氷のように冷たかった。
その眼下へと引きずり出された青年は、ささやかな抵抗をしたのだろう、顔には殴打された後が幾つか残っていた。
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