「目を閉じて貴方の吐息を」 匠は自分をじっと見つめる玲二の視線に気づいた。 二人はソファに座り、テレビをつけてくつろいでいた。特に話すことがなく、玲二がテレビ番組のチャンネルをひっきりなしに変えている。そのうち、情報収集もすんだようで、大仰な深い息をつき、玲二がソファに深く座りこんだ。その様子を匠は肌で感じ取りながら、新聞に目を通していた。 あまりにじっと見つめるものだから、照れくさくなり、匠は顔を反対側にそむけた。 「あのさ、匠って芸能人の伊藤英明に似てるよな」 予期せぬ言葉に、匠は玲二を見返す。どこにでもいるような平凡なこの顔を捕まえて、芸能人に似ているなど、玲二の目は節穴かと思った。 「あ、でもさ、韓流スターのイ・ビョンホンにも似てる」 「そうか……」 何と答えていいかわからない。しかもうっとりした目で言われると、何となく恥ずかしい。どちらの俳優もうろ覚えにしか思い出せない。玲二と違い、俳優より女優に目が行くからよくわからないともいえず、気まずい咳払いをし、せわしく音を立て、新聞のページを繰る。 そこへいきなり玲二が倒れ込んで来て、匠の腿に頭を置いた。下から若々しい玲二の無邪気な目が覗き込む。 「照れてんの?」 匠は玲二の仕草にドキリとしながら、それを隠そうと新聞を顔の前に寄せた。 「照れてない」 「照れてるよね!」 さもおかしげに玲二が含み笑った。 「照れてないって」 「じゃあ、顔見せてよ」 なんだか今日の玲二は甘えん坊だ。匠はそろりと新聞を脇に下ろして、玲二の顔を見た。 何となく照れ臭い。玲二のまっすぐな瞳を見返せなかった。 「顔赤いよ? そういうとこ、匠、かわいいね」 玲二がにこりと微笑んだ。 やけにじゃれついてくるので、反対に訊ねる。 「今日はいつもより甘えてくるな」 続 |