▼ロー 「置いていったのはキミの方なのにね」 事実なだけに返す言葉がない。 確かにあの日、手を離したのはおれの方だった。勝手だとはわかってる。 「もし、嫌だと言ったら?」 「海賊は奪うもんだ」 「強引ね」 それも自覚している。それでも、自分でも驚くほど焦がれている。海賊になる事がどんな事かわかった上でかつて離した手を再び伸ばそうとしている、なんて。我ながら馬鹿な話だとは思う。 「男なら奪う前に落としてみたら?」 記憶の中よりも伸びた髪を風が揺らす。あの頃は無邪気と言う言葉が合っていた笑みも今はどこか妖艶で。 「なんて、ね。連れていって。見せてよ、キミが見る世界を」 「後悔はさせねェよ」 |