<テスト配信中です> ・・・・・・・・・・ 何人かの学生が通り、時も過ぎ。 諦めようかと思い始めた頃、人影が見えた。 なぜだろう、遠くからでもわかる、確かに彼だった。 少し俯きがちなのは、あの日と同じ。 道の落とし物を探している訳でもないだろうから、普段から目線を下げているのかもしれない。 あの日少し怯えたように見えたのも、そう言う性格だったのか。 だったら、驚かせちゃいけないな。 どう現れてどう切り出そう。 そんな事を考えていたら、彼はもう公園まで来ていた。 座っていたベンチから慌てて立ち上がる。 その気配に気付いた彼が、こちらを見た。 登場の仕方なんて考えても、これじゃあ意味が無い。 なんて間抜けな事態になっちまったんだ。 彼は、明らかに驚いた顔で俺を見る。 下足場の奴だとわかったらしい。 「ごめんなさい!」 とりあえず謝って深く頭を下げた。 逃げられただろうかと、失態を悔やみながら頭を上げる。 しかし彼は、驚いた顔のままそこに居た。 「少しだけ、話を聞いてください」 ゆっくり、一歩ずつ近付く。 逃げ出した小動物を捕まえる時の気分だ。 怯えさせないように、驚かさないように。 逃がさないように。 . |