身近に小さな文明論{No}号  2004/08/01

身近に小さな文明論・・2004.08.01

モグラ

あれは小学生の頃だったのかもしれません。学校が終ると友達を誘い、よく
モグラを捕まえて遊んだのを思い出します。遊ぶと言ってもあの退化した目
のあたりを見つめて大笑いをしたり、オケラを大きくしたような穴掘り用の
腕力を確かめる程度。きっと穴の中からうまいこと引きずり出すことの出来
たプロセス、すなわちその成功感に酔っていたのでしょうね。

あれ以来長いことモグラなど頭の中から消えていました。住宅に挟まれたコ
ンクリートの道だけを歩き続けたのであるから当然かもしれません。ところ
が最近早朝散歩をするようになって、再びモグラが気なるようになりました。
川の堤を歩いていると真中に盛り土があって、毎朝一つか二つづつ先へと増
えていくなど、そんな不思議な光景に気づくのはジョギングに熱中していた
時でも、サイクルに時間を割いていたときでもありません。もちろん車生活
にモグラの光景など無縁でしょう。ウォーキングの視点が必要なのです。し
かも健康体操の先生がいう、両手を前後に振っての速歩などでは無味乾燥、
機械の世界になってしまいますから、ゆっくりと自由気ままに光景を楽しむ
ウォーキングでなければなりません。

ところでモグラは地球上に30種類もいると言うことを知っていますか。日
本にも何種類か存在して、特にコウベモグラとアズマモグラと言うのが箱根
(の近辺)を境に西と東をそれぞれの縄張りにして二分しているようです。
彼らは地中でしか暮らすことが出来ないから食糧確保に非常な難儀をするよ
うで、そのためある範囲の縄張りを必要とするから爆発的に増えることなど
ないのかもしれません。モグラは古来農地を荒らすからと嫌われたようです
が、それこそ無実の罪。その生活態度は意外にもあの健気な顔に相応しく地
味なもので、土の中にトンネルを掘って田んぼの水漏れを起こすことくらい
はあっても、他に害を及ぼすことなどありません。食糧はもっぱらミミズ一
辺倒、偶に地中で出会った昆虫の幼虫を食するにしても一日中ミミズを追っ
て動き回る生活を余儀なくされております。その間ネズミと違い、野菜の根
など絶対に齧らないと言いますから、モグラが存在することはもっぱらミミ
ズに恵まれた、肥えた土地の証しと喜ぶべきなのです。しかも偶然出会った
野菜の根きり虫などまで食するとなりますと、モグラは益獣と言ってもいい
のでしょう。

今朝はゴルフ場向け芝生を出荷したばかりの土地でいくつものモグラの作っ
た塚を見つけました。あれらの塚は利口なモグラが地中だけで不足する餌を
補う目的で作る、食糧を誘い込むための罠なのです。かれらは一日に何度も
あれらの罠を見回っているそうですから、あれらの塚の上で待ち構え、モグ
ラのパトロールが近づく振動を検知して塚を掘れば昔のようにモグラ捕りも
出来そうなのですが・・いずれにせよ自然のバランスとは実に巧妙で美しい
ものですから、その共存共栄の原点はいつまでもそっとしておきたいもので
すね。


ホームページにもぜひお寄り下さい・・→
陽はまた昇りて   http://kikiwata.hp.infoseek.co.jp
              タワンティンスーユ http://www5b.biglobe.ne.jp/~cir-KIKI

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。