身近に小さな文明論{No}号  2004/11/07

身近に小さな文明論・・2004.11.07

生き残り作戦

会津鉄道会津線は福島県会津若松から栃木県日光の方角に向け、会津高原の
素朴な四季の中を走り抜ける。電車は会津盆地を出ると直ぐに山あいを縫う
大川沿いに一路南下する。その沿線は温泉で有名な芦の牧、大川によって長
い年月をかけて削り取られた奇岩怪石で有名な景勝地・塔のへつりをはじめ、
四季折々に人の目を惹きつける豊かな観光地に恵まれている。萱葺屋根の家
々が集まる保存集落・大内宿も沿線からほど遠くないところにあり、豊かな
集客効果を発揮している。ところがそれら観光資源へのアクセスも最近鉄道
から、モータリゼーションの普及と相まって整備された日光への街道・118
号国道へとその主体を移し、鉄道離れを加速している。そこで考え出された
のが東武鬼怒川線に相互乗り入れすることにより都心へ直結することであっ
た。今や会津若松と東武浅草との間を乗り換えなしの4時間ほどで結び、首
都圏からの観光客を誘う一方、「水上バスにのってお台場を散策しよう」のキ
ャッチフレーズの下に会津の観光客を呼び寄せようとしている。

事実、塔のへつりの奇岩怪石を堪能した観光客は直ぐ近くの塔のへつり駅で
再び観光バスを降ろされる。おおよそ駅らしくない、まるで瀟洒な公園事務
所のような駅舎を入ると小さなホーム。その駅に来る、来る、来る、来る、
観光バスの行列。観光客はバスから降りて次々に駅のホームに押し寄せるの
だ。やがてやってきた三両編成の電車に乗り込んで二駅先の芦ノ牧温泉へ。
その間沿線の渓谷美を堪能してもらい、芦ノ牧温泉駅に先回りしたバスに再
び乗車して次の観光地に向うという算段。どうも観光会社と会津鉄道とがタ
イアップして企画して、二駅だけの観光列車に変身させる企画らしい。しか
も電車にはお座敷電車あり、トロッコ電車あり、展望電車ありとくるから、
そのタイアップは筋金入りといって良い。多分今の季節なら紅葉列車となっ
て焼けるような山間を縫うのだろう。そして間もなく冬になると雪見列車に、
春が来ると新緑列車に早代わりするのかもしれない。

カメラを取り出すとすかさず、「お撮りしましょうか」と笑顔を向けた車掌さ
ん。会津鉄道は今生き残りをかけてCS(Customer Satisfaction)を実践し
ているのかもしれない。

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