身近に小さな文明論{No}号  2005/04/03

身近に小さな文明論・・2005.04.03

観光客に群がる子供たち

ここはカンボジアの第三の都市・シェムリアップです。世界遺産アン
コール遺跡群で有名になりました。つい数年前までは内戦の後遺症で
ある地雷が残っていたため訪れる人もなく寂れたジャングルでした。
しかし今や観光資源となるアンコール遺跡群の周囲から地雷は除去さ
れ、世界中からの観光客を支えることでシェムリアップは成り立って
おります。

昼の十二時を回ったところです。気温は優に30度を越えています。
とある市内のレストランの前。一人の少年が地面に座っています。じ
っと下を向いたまま、何を考えているのでしょう。やがて1台の観光
バスが滑り込んできます。少年の反応は見事でした。バネ仕込みのよ
うな体で跳ね起きるとバスに近づき、降りてくる観光客にお金をせび
ります。かなり執拗にがんばりましたがとうとう不成功に終り、再び
さっきの同じ場所に戻ってさっきと寸分も狂わない格好で座り直し、
レストランに入った観光客が出てくるのを待ちます。

これまでも貧しい国にある観光地では子供たちの物売りに辟易とさせ
られてきました。一人の興味を引こうものなら何倍もの子供たちが集
まってきます。観光ガイドからは相手にしないように注意されました。
売るもののない子供は木の葉を手渡して金をせびります。一言二言日
本語を覚えた少年は日本人観光客に話し掛けてチップをせびります。
そして何もない子供は上に述べたようにひたすら金をせびります。言
葉がわからないからただ「うーうー」と唸りながら手を差し出します。

子供たちはそれまでにそうして何がしかのお金を手にしてきたのかも
しれません。それを伝え聞いたさらに多くの子供たちが集まって真似
るようになるのでしょう。しかしその数は余りに多すぎてもはや誰か
らも見向きもされません。その有様には心が痛みます。子供たちに
「未来」の文字など存在しないのでしょう。世界の需給バランスを考
えるとき、それらの貧しい人たちを踏み台にするからこそ、我々のよ
うな豊かな人たちが成り立っている現実を実感する瞬間なのです。

しかし、恐らく地雷で両足を失ったのであろう少年が吹く笛の音にし
ばし耳を傾け、そのお礼にそっと少年の前に1ドル札を置くほかあり
ませんでした。

ホームページにもぜひお寄り下さい・・→
陽はまた昇りて   http://kikiwata.hp.infoseek.co.jp
 タワンティンスーユ http://www5b.biglobe.ne.jp/~cir-KIKI

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。