身近に小さな文明論{No}号  2005/05/01

身近に小さな文明論・・2005.05.01

絞め殺しの木は文明を支えるモノ?!

絞め殺しの木が文明を支える姿を目にしたのはテレビで放映された立松和
平さんの、あの独特の言い回しの中でした。アンコールワットを旅する番
組だったと思いますが、1000年近い長い時の流れに身を委ねたままの
石造り寺院が熱帯のジャングルとゆっくり折り合いをつけてきた姿に、一
瞬目を惹きつけられたのです。

1186年にジャヤヴァルマン7世によって建立されたタ・プローム寺院。
敬虔なヒンズー教徒であったアンコールワットの創建者スールヤバルマン
2世と違って、アンコールトムの創建者であるジャヤバルマン7世は熱心
な仏教徒でした。その王が母の菩提を弔うためにアンコールトムの東側に
建立した仏教寺院がこのタ・プローム寺院なのです。この寺院は後にヒン
ズー王の時代に代わってから一時ヒンズー寺院に改装されましたが、その
後放置され、今日に至るまで人の手を加えることもなく熱帯のジャングル
に委ねられました。

ある日、一粒のガジュマルの種子がタ・プローム寺院の石造りの屋根に舞
い降りたのでしょう。やがて猛々しい熱帯のスコールを浴びて芽ばえ、地
面を探るように一本の根を伸ばしました。きっとその根は寺院の石の隙間
に入り込んで大地を目指したのでしょう。成長とともに逞しいガジュマル
の根は石の隙間を押し広げて、それに抗らう寺院との間で1000年近く
にも及ぶ長い葛藤の時を刻んだのです。そして今日に至ると、もはやガジ
ュマルを取り去ったら寺院は崩れ去る関係に発展しているのでしょう。ま
た一方で、寺院が崩れ去ったらガジュマルの方も支えを失い倒れるのかも
しれません。

その姿は人に感動を呼び起こすでしょう。アンコール文明を支える自然に
驚愕しないわけにはいきません。その挙句に、人間の作り出す文明に比べ
たら桁違いに巨大な自然の力を思い知ることにもなるでしょう。

文明と自然の折り合い点・・それを踏み違えたら確実に自然の逆襲に遭う
という格好の見本かもしれませんね。

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