身近に小さな文明論{No}号  2005/06/12

身近に小さな文明論・・2005.06.12

インド人の視線

デリーから白亜のタージ・マハールで有名なアグラへ200キロ、上等と
はいえない道路に揺すられながらのバスの旅。普通なら市街地を出れば畑
地か荒野が続くはずなのに、人、人、人が続々と道路を歩いています。気
温は優に40度を越えているのでしょう。急がずゆっくりと、そうかとい
って何をする風にも見えない人、人、人・・

それらの人たちがこちらに気付くと決まって一斉に視線を向けるのです。
そしてあたかも驚きの表情を晒しながら息を呑むのです。それはデリーで
も同じでした。路線バスと併走することになった時など、超満員のバスか
ら一斉に視線がこちらに向けて放たれたのです。どうして日本人がそんな
に珍しいの・・そう叫びたくても言葉の通じるはずもなく、その度に慌て
てバスのカーテンを下ろしたものでした。

理由がわかりました。アグラ城を見学していて、インドの田舎から観光に
出てきた一族7名のグループと出会い、またまた一斉の視線を向けられ、
ふと驚いた表情の女の子の視線に笑顔を返したらニコリと笑い返され、そ
れが切っ掛けで一族の長老らしい男と英語でのコミュニケーションが結ば
れ、彼の話によると日本人が珍しいのではなく外国人をあまり見たことが
ないからだというのです。一旦コミュニケーションが図られると我も我も
としゃべりはじめる始末。

そういえばデリーの観光地で、外人らしい観光客に出会った記憶が少ない
ことに気付きました。偶に欧米人のグループがいたくらいでした。まだイ
ンドへの観光客は少なかったのです。事実ここに来る前に友人に「インド
へ行く」というと「何でまたあんなところへ」と呆れられたものでした。
そしてその通りで、連日40度を越す暑さに辛すぎる料理のオンパレード、
町は汚れているし歯磨きまでミネラルウォーターが必要な国。その上トイ
レ探しもままならない現実は美しい世界遺産を訪れたい人々をまだ躊躇さ
せているのかもしれません。

やがてインドの町が世界の観光客で埋るようになったら、その時は他の観
光立国と肩を並べているのでしょう。ただし「現在の良さを失う」という
代償を払ってのことですが・・

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