『Blue fairy』/73  2005/03/01

(……)
彼は少しだけ湧いた興味をもって、気付かれないように其処へ近付いた。
青年は店から遠ざかり、どうやら帰路へついた様子だった。
だが、いくらも歩かないうちに、ふと突然その足が止まる。
もしや感付かれたかと彼は身を強張らせたが、どうやらそうではないようだ。
ポケットから取り出されたのは、携帯電話だった。
相手は友人なのだろう。傍にあった塀に背をもたれて、軽快に会話を始める。
彼は用心深く、もう少しだけ近くへ寄った。
人間よりも少々鋭敏な彼の耳に、小さいが、青年の話し声が聞こえてきた。

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