花散る丘/9  2005/03/30

趣味が悪くて、策士で、性格のねじくれた―――
「…………行く」
苦虫を数十匹も噛み潰したような顔で、彼は読みかけの本を閉じた。

***

「わぁ…っ」
其処は小高い丘の上だった。
車で一時間もかからない距離ではあったが、辺りに民家もなく、人影も見当たらない。
大人の一抱え程の、どちらかと言えば小振りな桜の木は、今が盛りのようであった。
地面へ積もるほど舞い散っても尚、咲き乱れる薄紅色の花は誰の目にも美しい。
「凄いね、綺麗」
加えて空は雲ひとつない晴天とくれば、絶好の日和だ。

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