花散る丘/21  2005/04/11

ジョーは少し笑って、そうだね、と肯いた。
彼の明るさには、時折救われる事がある。今もそうだ。
せめて楽しい花見の最中くらい、怖ろしい伝説など忘れてしまった方がいい。
桜の花はそんな思惑など知る由もなく、ただ風に花弁を舞わせていた。

***

かたん…

―――闇の中で、ほんの微か響いた音に気付いて、少年はふと目を覚ました。
それは普通の人間ならば気付かないような音であっただろう。
だが、元より鋭敏な感覚と、完全には眠りに落ちていなかった意識がそれを捕らえてしまった。
(…玄関…?)

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