花散る丘/22  2005/04/12

布団の中で耳を澄ます。
次に聞こえてきたのは、彼にとって覚えのある硬質なエンジン音だった。
あれは―――
(……)
ジョーは急いで上着を羽織ると、ベッドから降りた。

***

夜に包まれた丘の上は、まるで墓地のように静かだ。
明け方から降り始めるという雨の気配だろうか、空気は冴え、僅かな湿り気を帯びている。
薄紅色の花を揺らして、小さな木は変わらずそこにあった。
(……)
彼はその幹に、掌で触れた。
昼間よりも幾分か冷たい風が散らした花弁が、指の間へ落ちてくる。

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。