花散る丘/25  2005/04/16

ジョーはやっと顔を上げ、それから素直にひとつ肯くと、隣へ歩み寄った。
褐色の肌に黒いライダースーツを纏った彼は、闇に溶けてしまいそうだった。
「…君こそ、どうして此処に来たの?」
「んー?…だって明日は雨だって言ってたじゃない。…散っちゃう前にもう一回見ておきたかったのよ、それだけ」
眩しそうに花の枝を見上げて、彼は呟いた。
「綺麗。昼間も綺麗だったけど、夜も凄く綺麗」
―――薄紅の花は、闇の中で仄かに白く光って見えた。
花弁の一枚一枚が月の光を湛え、雪のように夜空を舞う。

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。