花散る丘/26  2005/04/18

魂というものが、もしこの世に存在するならば、その時桜の木には確かにそれが宿っていたのに違いない。
そう思わせるほどに美しく、妖しい眺めだった。
「……」
ジョーは黙って、彼の腕をきゅっと掴んだ。
「…どうしたの?」
「なんでもない…」
「…昼間の怖い話、思い出した?」
少年は首を横に振った。
幽霊なんて怖くはない。
けれど、狂ったように咲く桜の花は、少年に得体の知れない恐怖を呼び起こさせて止まないのだ。
再びうつむいてしまった栗色の頭のてっぺんを、冷たい掌が慰めるように撫でた。

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