花散る丘/29  2005/04/21

「……ベリアル」
もう一度その腕をぎゅっと掴んで、ジョーは呟いた。
「…なぁに?」
「君は…今…幸せ…?」
唐突な質問は、ふとその端整な顔を驚きに歪ませる。
彼は困ったように声を立てず苦笑すると、銀の睫毛を伏せた。
滅多に見せない寂しげな表情を、枝の陰が隠していた。
「……それはこっちの台詞よ。そんな泣きそうな顔して」
「…ごめん…」
今日だけで何度目かになる謝罪の言葉を唇に乗せながら、少年はただ彼の顔を見上げる。
彼は、真摯な瞳に見つめられるのを恥じたように、顔を背け空へと向けた。

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