花散る丘/32  2005/04/24

桜は散る勢いを弱めたものの、それでもまだちらちらと舞うのをやめない。
まるで、やがて来る死を知らぬげに。
「……」
ジョーは手を伸ばして、彼の冷たい頬に触れた。
「……それでも」
例え罪から生まれ、土に還ることも、生まれ変わることも叶わなくても。
「僕は君に、ここに居て欲しいよ。……今の君にとって、幸せでなくても」
「……お姫さん?」
「お願い。僕に出来ることなら、何でもするから。そんな事言わないで」
風に煽られたままの前髪に半ば隠れた瞳には、涙が滲んでいた。

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