花散る丘/33  2005/04/26

「……我が侭、なのかな……」
握り締めた腕を少し緩めて、少年は呟いた。
他人の幸せの基準なんて、誰にも判らない。
だけど、でも。
「―――…優しいのね」
「優しい…?」
そんなんじゃない、と首を横に振った少年の顔を、彼の両手が挟んだ。
「……いい子。だけど、駄目よ。アタシなんかの為に泣くなんて」
「…だっ…て…」
いつの間にか、ぽつりぽつり、空から雨粒が落ちてきていた。
黒い雲に覆われた空からは、星の光も消えている。
今夜は嵐になりそうだった。

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