Ghost Thierf/30  2005/05/28

だが、その手は男の胸をすり抜け、危うく向こう側の壁にぶつかりかける。
「うわ…!!」
踏鞴(たたら)を踏んでのけぞった彼に、少年が手を差し伸べた。
「大丈夫?」
とりあえずそれには肯いておいて、彼はもう一度目の前のものを睨んだ。
つまりは蒼い、水を湛えた硝子の器のような双眸を。
「……本物、なのか……?」
幽霊―――死んだ人間が魂だけの存在となって、この世をうろつくなどというのは、大人が子供を怖がらせる為のお伽話に等しいものだと思っていた。
だがそれなら、ここにいるこれは一体何だと言うのか。

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