Ghost Thierf/63  2005/07/04

少年が呟くと同時に、ドアの隙間から白い霧が吹き込んだ。
いつかのようにやがて人の形を成したそれが、青い瞳で彼をちらりと睨んだ。
「おかえり、ハインリヒ」
「……噂をすれば、ってか」
ソファの横に頬杖をついて、彼は溜息をついた。
相変わらず警戒は解かれていないようだ。
「何か変わったことはあった?」
少年が駆け寄っていって、相棒に尋ねた。
『……特には』
幽霊は冷静に答えたが、ふと眉間に皺を寄せる。
『……』
「何?」
『いや……ほんの些細な事なんだが』
低く掴み所のない声が、更に小声で呟いた。

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