Ghost Thierf/72  2005/07/13

未だ機嫌を損ねているかとも思ったが、返ってきたのは静かな答えだった。
『……何も』
ひどく感情を欠いた声だった。
喜色も悲哀も、落胆もない、およそ生きた人間のものとは違う声。
「……なぁ」
微かに沸いた興味をもって、再度その横顔を見た。
「あんたさ、死ぬ前もこんなだったのか?」
冷たくて、近寄りがたくて、真っ白で。
生きている時も幽霊じみた人間だったのだろうか。
男は暫くの間、質問に答えなかった。
無表情な顔からは解らないが、また何か癇に障ることを言っただろうかと、ジェットは内心怖れていた。

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