Ghost Thierf/76  2005/07/17

「俺、負けねぇからな」
幽霊がふと顔を上げて彼を見れば、不敵な笑みが月明かりに浮かぶ。
『……何を』
男が、どういう意味だと問う間もなく、彼は窓枠から飛び降りた。
その時丁度、少年が部屋の奥から出てきた所だった。
「お待たせ。……さぁ、行こうか」
「おう」
不吉な雲が三日月にたなびく。
―――夜は未だ、始まったばかりだ。

***

濃紺の闇に沈んだ廃屋は、しんと静まり返っていた。
埃に塗れた床を踏む度、軋んだ音が響き渡る。

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