Ghost Thierf/80  2005/07/21

一陣の生暖かい風が吹いた。
煙のような黒い霧が、一瞬にして辺りに漂う。
この感覚は何かに似ていると思った。あれは、そう、もっと冷たく鋭かったけれど―――
幽霊に初めて出会った時と同じだ。
霧はやがて、ぼんやりと形を成した。
「……っ」
それは到底、人の形を取るには至っていなかった。
だが、笑った。
口も目も見当たらないというのに、確かに笑んだのだ。
全身から、音を立てて血の気が引いた。
これは―――
「!!」
霧は逃げるように廊下の向こうへ移動する。

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