Ghost Thierf/83  2005/07/24

―――黒い霧はその向こうへ、吸い込まれるように消えた。
「……っ!」
未だ荒い息を吐きながら、彼はその扉へ手をかけた。
何年もの間風雨に晒されてきた錠前は、存外にあっさりと音を立てて壊れた。
半ば蹴破るように開ける。
そこは、広間だった。
割れたステンドグラスから差し込む月の光が、鮮やかに揺れている。
屋敷に人が住んでいた頃は、さぞや盛大な宴が開かれていたに違いない。
だが今や、そこにはただ、ぽつんと一人の影が落ちるばかりだった。
「……お前……」

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