Ghost Thierf/112  2005/11/20

ひどく悲しげに呟いた少年に向かって、影が牙を剥いた。
『…それに触らないで…!!』
だが、低い声は微かに震えている。
「自分が大嫌いだった君は、この中にもう一度新しい自分を作り上げたんだ。……誰にでも、望む誰かになれるように…!!」
少年が絵を裏返すと、そこあったのは一枚の大きな鏡だった。
磨き上げられた銀色の面に、影の姿が映し出される。
鏡の中の影は、あの黒い不定形の霧のままだった。
鏡はどんな姿も映し出すことができる。だが、所詮は鏡だ。映したものがそこに在るわけではない。

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