Ghost Thierf/113  2005/11/21

誰にでもなれる、しかしその誰でもない、誰かにならなければ存在できない希薄なもの―――
『…ッ…!!』
影は眉を潜め、唇を噛んだ。
今まで怯みもしなかった冷ややかな顔が、嘘のように歪む。
「見た目がいくら綺麗でも、腹ん中はごまかせるもんじゃねぇ」
青年が真っ直ぐな琥珀色の瞳を影に向けた。
手には何処から拾ってきたのか、崩れた壁の破片が握られている。
「……それが解らねぇお前は、やっぱり汚い化け物だ。解ったか変態!!」

青年の拳が、鏡を砕いた。

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