闇の中/8  2006/01/09

この組織の力を持ってして消せぬものなどない。世界さえも、思うままになるだろう。なのに何故。
「何度も言わせるな」
「獅子は兎を倒すにも全力を尽くすと、申します」
男が玉座から立ち上がる。
布擦れの音に、老幹部の肩がぴくりと跳ね、そして己の罪を知って微かに震え始めた。
「―――……私がそんな愚かな獣に見えるのか」
低い声音は笑っていた。
笑みの向こうの怒りと自信が、言い知れぬ恐怖を呼び起こす。
「消えろ」
「……っ……」
声にならない悲鳴が漏れた。

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