闇の中/10  2006/01/11

絆を信じ、人を信じる、人ならざるものたち。

「……まだ、早い」

あどけなさを残した紅の瞳の少年が、兵士のひとりを容易くなぎ払うのが見えた。
血に濡れた紅茶色の髪が踊っている。
男は、知らず心の底から沸く愉悦と快楽を抑え切れずにいた。
まだ、消えるべきではない。
こんな楽しいことの行く末を見るのは久し振りだ。
「もっと―――もっと足掻け」
己の存在意義に悩み、戦いに捕らわれ、敵に恐怖する。
時には束の間の幸福に身を置くのも良い。
それが壊され、侵される瞬間に怯えながら。

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