北風と太陽/1  2006/01/19

昔々、遠い国での出来事。

***

「……暇だな」
空の上で、ジェットはふうと溜息をついた。
彼はここら一帯を吹く風で、琥珀色の瞳に赤い髪をなびかせた若者の姿をしてはいたが、もうずっと長いこと空を飛び回っている。
季節がうまく巡るように、空気を運ぶのが仕事だ。
「何か面白いこと、ねーかな…」
だが今は、嵐の時期も過ぎた春の真っ只中。
北風も南風もまだいらない、平穏な日ばかりが続いている。
時折は気まぐれにそこらを走り回ってはいるけれど、血気盛んな風の青年は毎日が退屈で仕方なかった。

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