北風と太陽/2  2006/01/19

雲の上からぼんやりと手を伸ばして、下に広がる柔らかそうな緑の草原をたどる。
「……あ」
と、その指の先に、何か動くものが見えた。
空の眷属の目は、地上の全てを見ることができる。彼は瞬きすると、それを見つめた。
―――それは、人間だった。
こんな、誰も好き好んで通らないような野中の獣道には珍しい。
よくよく眺めて見れば、白い馬に乗ったその少年は、たいそう身なりが良かった。
象牙色の肌は異国の民の証だろうか。栗色の髪はふんわりと陽光に透け、前髪の奥の大きな瞳は鮮やかな赤に彩られている。

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。