北風と太陽/8  2006/01/23

成る程、少年の外套はゆったりと重そうだ。
あれを他人が脱がすのは少々難しいに違いない。
「だが一体何を賭ける」
「そりゃ、脱がせた結果がそのまま報酬」
「……お前は」
「何だよ、何も直接ちょっかい出そうってんじゃないんだぜ。……見るだけ、な。見たくない?」
太陽はもう一度、下界を見下ろした。
上着の襟から微かに覗く白いうなじが、百合の花のように揺れている。
その下の肌も、容易に想像することができる。
恐らくは未だ誰も触れたことのない―――
風が、ふふんと鼻で笑った。
「決まりだな」
「…全く…」

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