北風と太陽/10  2006/01/24

あまりにも突然の事に、少年は驚いて馬もろともたたらを踏んだ。
草原が突風に波の如くうねる。
『そんな上着一枚、吹き飛ばしてやるぜ』
これでもかと吹き付ける風が木々を揺らし、砂埃を巻き上げていく。
少年は上着の襟を押さえて、寒さに震え始めた。
それを見た風は更に勢いを増す。
だが、それでも少年は上着を手放すどころか、ますますしっかりと身を縮めるばかりだ。
『しぶといな』
風は暫く突風を吹かせ続けた。
少年は我が身を抱えるように両手で上着を押さえ、苦しげに眉をひそめる。

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