北風と太陽/11  2006/01/24

やがてその、ぎゅっと閉じた目の端に小さな涙の粒が湧く。
風は思わず怯んで、勢いを弱めた。
苛め過ぎたか―――
怖がらせるのが目的ではない。ここまでやったのに、少年から上着を脱がす事は出来なかった。
自分の負けだ。
風は唇を噛むと、再び高い高い空へと舞い上がって行った。
雲の上では、一部始終を見守っていた太陽が腕組みをして待っていた。
「……失敗した」
「当たり前だ。あんなやり方で」
太陽は呆れ果てた様子だ。
「あの人間ごと世界の果てまで吹き飛ばす気か。強引な奴だな」
「何だよ。だったらやってみりゃいいだろ」

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