北風と太陽/23  2006/01/31

やがて水面へ顔を出したのは、褐色の肌に銀の鱗を纏った人魚の青年だった。
青年は黒曜石の瞳で二人を見上げると、穏やかに微笑んだ。
「やあ。……どうしたんだい、珍しいね」
「訊きたい事があってな。少し協力してくれるか」
「協力?」
彼はこの泉を守る水の精だ。
泉に注ぎ込む源流から、幾つも枝分かれした川の全てを司り、またその恵みを受ける大地の全てを知ることが出来る。
賢い人魚は、風と太陽の地上で最も親しい友人だった。
「僕に出来ることなら何でも」
泉の精は頷いて、岸辺に腕をかけた。

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。