北風と太陽/29  2006/02/04

自分の居場所は知られている。生まれたと知れば、王の跡目を狙う奸臣どもに息子が狙われないとも限らない。
王と引き離された今、たったひとりの愛する息子が謀略に巻き込まれる事だけは、避けねばならない。そう思ったのだ。
かくして王子はすくすくと、孤児院で育った。
だが、元々体の弱かった母親は、成長した息子の姿を見ることなくこの世を去った。
息子の為にたった一つ、あるものを遺して。

そして、それから十数年の時が経った。

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。