北風と太陽/30  2006/02/04

ここから先は推測でしかないが―――きっと王子は、今になって初めて己の血筋を知ったのだろう。
王位を継ごうと決心したか、それとも母を追い出した奸臣どもを成敗すべく立ち上がったか、それは解らない。
確かなのは父王が亡くなったのをきっかけに、祖国へ帰る決意をしたということだ。
母親が託してくれた唯一の遺産は、王家の紋章が入った上着だった。
あの上着があれば、少年の身分は証明されるだろう。

だが、その事を密かに知って面白くないのは、仮の玉座についている大臣だ。

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