北風と太陽/32  2006/02/05

不幸にも水浴びの途中だった王子は、あっさりと策略に嵌ってしまったという訳だ。

「だけど、なんでそれがあいつだって…」
「いつだったか、母親が赤ん坊の王子を連れて神殿に来た事があった。……どうかこの子だけはお守り下さい、とな」
太陽を崇める神殿は、この国には幾つもある。そのひとつを司るのも、彼の仕事だった。
あの栗色の髪と深い赤の瞳を前に見たのはその時だ。
王子の国からこの国まで繋がる川が流れ込む泉の精も、一連の出来事を記憶していた。

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