北風と太陽/33  2006/02/07

不運な王子は自らの身を守るため、身分を隠し人目を忍んで、一人きりで祖国へと帰る途中だったのである。
「……俺、とんでもない事思いついちまったのか。もしかして」
風は自らの好奇心を恥じた。
安易な悪戯のせいで、随分あの少年を苦しめてしまったものだ。
もし顔を合わせる事があったら、謝らなければいけないと今更ながら思った。
「その点は俺も同罪だ。……だが今は、のんびり反省してる場合じゃない」
太陽はふと足を止めると、生い茂る森の奥に向かって小さく呟いた。
「フランソワーズ、そこにいるか」

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